
最近、シリアの過激派組織である「イスラム国」の協力者が、拘束した日本人の身元特定のためにTwitterを利用したとして話題になりました。少し以前では、ハッカー集団(というか正確にはクラッカー集団)のアノニマスの日本語ツイートがかわいいなどと話題になっておりました。
・湯川遥菜さんがシリアで「イスラム国」に拘束されましたが、本当は民間軍事会社のCEOじゃなさそうなので解放してあげてほしい | sakedrink.info
・国際的ハッカー集団アノニマスの日本語ツイートがカワイイと話題に「でもちょっとミスしました。誤爆ごめんな(笑) やっぱり日本語は難しい。」 | ロケットニュース24
テロリストとソーシャルメディアでつながれるなんてまったく筒井康隆のスラップスティックSFのような世界になったものだと常々感じておったのですが、ふと気になることがありました。
テロリストがTwitterを使うのは規約違反ではないんだろうか。ふと気になった。あとで調べてみよう。
— 岡崎 良徳 @Lococom責任者 (@okachan_man) 2014, 8月 18
そう、Twitterを犯罪に利用するのはTwitterの規約に違反するのではという話です。
普通に考えれば違反だと思うのですが、自由の国アメリカが発祥のサービスですから利用方法はあくまで自己責任であり、発信内容に運営がいちいち関わることはないのかもしれません。ちょっと気になったので規約を読んでみました。
非合法利用:非合法な目的や、違法な活動を促進させるためにTwitterサービスを利用することを禁じます。世界中のユーザーは、オンライン上での行為や適切なコンテンツに関して、全ての現地法に従うことに同意するものとします。
うん、そりゃまあそうだよね。やっぱり違法行為、そしてそれを促進する行為は規約違反のようです。今後はアウトローなツイッタラーを見かけたら、いちいち吊るしあげたりするのではなく淡々と運営に報告するのがよろしかろうかと思います。
さて、そこで気になったのが冒頭でも挙げた「イスラム国」の協力者のアカウントです。どう考えても過激派のシンパだし、どうしてTwitterはこのアカウントをいつまでも凍結しないんだと疑問に思ったのですけれども、タイムラインを眺めてみて「実に巧妙だなあ」と思ってしまいました。
まず、くだんの日本人特定のためのツイートでは以下のように述べています。(拙い訳ですので誤りがあればご指摘いただけると助かります)
Brother send me these pics, captured a japanese? in N. Allepo among FSA, he was armed, claiming he is Photogr. & Dr. pic.twitter.com/pjPIvj7e65
— AbuAbdullah (@ANS4R1) 2014, 8月 17
ブラザーが日本人を捕まえたとこんな写真を送ってきた。北アレッポの自由シリア軍と一緒にいたそうだ。武装してたけど、写真家兼医者だと自称してるんだよね。
#Update: more info on that Japanese guy, his name is Haruna Yukawa, and he is a PMC. Doesn't look good for him. pic.twitter.com/bhzgoxaD1i
— AbuAbdullah (@ANS4R1) 2014, 8月 17
例の日本人について続報があった。彼は湯川遥菜といって民間軍事会社(PMC)の人間らしい。これは彼にとってよくない知らせに思えるね。
うーん、微妙……。世情や流れを鑑みれば明らかにイスラム国に協力していると思えるのですが、発言単独を切り出したら、思わせぶりではあるものの、第三者的な立ち位置を保っています。
他の発言はどうなのかなと見てみれば、ほとんどリツイートばかりです。リツイートには賛意も反意も込められるため、テロリストに同情的なツイートばかりをRTしているからといって「こいつはテロリストの仲間だ!」と刺すことは困難です。これを持ってこのアカウントはテロリストに協力的だから凍結、という判断は運営として困難だろうなあと思うのですよ。
それに、すごく素朴な正義感を振りかざせば、「うるせーテロリストなんて悪だ! こんなやつらに肩入れするからには即凍結!」とできるわけですが、じゃあどこからが悪でどこからはOKなのか線引しろと言われたら頭を抱えてしまいざるを得ない。表現の自由だの、思想信教の自由だのが近代国家には備えられており、またそれが健全な民主主義を支える源でもあるわけです。
直近ではエジプトで起きた民主化革命がFacebook革命と呼ばれていたり(その後の混乱とか、実は背後で企業体が動いていたとかそんな話もありますが)、なんというかどこまでいってもバランスの問題なのかなあとも思えてきます。
うーむ、なんにせよ湯川遥菜さんの無事を祈るのはもちろん、紛争地で理不尽な死を迎える命がひとつでも減ることを願うばかりです。