“MM9(山本弘)”がゴジラとクトゥルフ好きなら絶対オススメの娯楽SFなので感想を書く


またKindleで面白い本が読めました。

「MM9(エムエムナイン)」はSF作家としてよりも、と学会会長としての方が有名かもしれない山本弘の2007年の作品です。

著作を読んだことがなくても、「山本弘のSF秘密基地BLOG」を目にしたことのある人は多そう。SFとは関係のない社会派記事がはてなブックマークでよくホットエントリ入りしております。

かくいう私も氏の著作を読むのははじめて。というか、巻末の著者紹介を読むまで同一人物と気がつきませんでした(笑)。

それはさておき、まずは例によってamazonからあらすじを引用。

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。多種多様な怪獣たちの出現予測に正体の特定、そして自衛隊と連携するべく直接現場で作戦行動を執る。世論の非難を浴びることも度々で、誰かがやらなければならないこととはいえ、苛酷で割に合わない任務だ。それぞれの職能を活かして、相次ぐ難局に立ち向かう気特対部員たちの活躍を描く、本格SF+怪獣小説。

うーん、実際に読むとちょっと違うのよね。

私と同じような感性の人にはすごく刺さる作品だと思うので、感想を書いておきます。

それでは目次から。

  • おっさんが楽しめる絶妙なリアリティ
  • 怪獣映画やクトゥルフ、オカルト好きにはたまらない!
  • ただし、本格SFではない

おっさんが楽しめる絶妙なリアリティ

あらすじにもあるとおり、主人公たちは気象庁に所属する公務員です。

公務員らしく「気特対」の面々はごく普通の人間たちであり、超能力だとか人並みはずれた特殊能力などはありません。

それどころか武器を持って怪獣に立ち向かうこともなく、基本的には自衛隊のサポートに徹します。怪獣の正体や対処法を探って実戦部隊を支援する役割なわけですな。

人格面でも似たようなもので、聖人君主はひとりもおらず、デート中に任務に呼び出されて嘆く若手がいたり、世間の批判を恐れて胃を痛めている上司がいたり。

なんとも地味です。

でも、おっさんが読むにはこれくらいがちょうどいい。

たぶん、もし主人公を自衛隊にしてしまっていたら、どうしても超人的な戦闘能力や、度を越えた勇気なんかが演出上必要になってしまって、そうなるとおっさんは気恥ずかしくてついていけなくなっていたでしょう。

怪獣が闊歩するという突飛な世界観ですが、すんなり受け入れて読めるのは登場人物にこの絶妙なリアリティがあるからです。

全5話の連作短編なので、1話1話テンポよく読み進められるのも娯楽作品としてポイント高いですね。

怪獣映画やクトゥルフ好きにはたまらない!

さきほど地味と書きましたが、それはあくまで登場人物の話。

怪獣の描写は十分に派手です。

数百トン、数千トンの巨大怪獣たちが山を崩し自動車を踏み潰し、音波ビームでビルを粉砕したかと思えば、挙句には現代兵器の通じないドラゴンが怪光線で自衛艦を沈めたりといった具合。

地味な人間ドラマの反動のためか、怪獣が登場するだけでカタルシスが味わえます。

とくに最終話に登場する怪獣はキングギドラを髣髴とさせる大怪獣。ゴジラなどの特撮が好きな方にはたまらないでしょう。

しかもこの大怪獣はクトゥルフ神話をモチーフとしており、「ふん~ぐる~い~ふ~う~いあ~ふう~た~ぐう~ん」などと、わかる人にはわかる声で吼えたりします。

本家クトゥルフ系の作品では、あまりにも敵役が強大すぎてまとな戦闘が描かれることが少ないですが、この作品では思う存分大暴れしてくれており、クトゥルフ神話ファンの積年の鬱屈を存分に昇華させてくれました。

ただし、本格SFではない

この作品に限らず、書籍のあらすじで残念なのは「いや、それはちょっと違うだろ」って煽りをちょいちょい入れてくるところなんですよね。。。

この作品は、ハードSFファンには子どもっぽく感じられてしまうと思います。

量子論や宇宙物理学を持ち出し、科学用語を散りばめることでそれっぽい仕立てにはしているものの、「ビッグバン宇宙の生物ではないからなんでもアリなんだ!」と繰り返されるために「それならもうくどくど説明しなくてもいいよ」って気持ちにさせられるのも確かなわけで。

本作でのSF要素は、“怪獣”という存在を作中世界で成り立たせるための雰囲気作りと割り切った方がいいです。

神様や妖怪などのオカルト要素が出てくるところも、ガチなSF読みには受け入れがたい気がします。

私の場合、SFだけでなくオカルトも大好物なので最初から最後までめちゃくちゃ面白く読ませていただきましたが。

怪獣とオカルトが好きで、難しいことは考えず純粋にエンターテイメントを楽しみたい方には全力でオススメの作品です。

私も心が疲れたときにはときどき読み返して癒されたいと思います。

ちなみに、続編で「MM9―invasion―: 2」というのも出ていたのでもちろん買いました。

こちらも面白かったらレビューしたいと思います。

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