誰の賃金を上げるのか?または生産性向上の問題


昨日書いた「国際競争ガーは誤解しているけど、国際競争が平均賃金を下げたのは誤解じゃないと思う」という記事に予想以上の反響をいただき、このブログをはじめてからひと月足らずにも関わらずホットエントリ入りを果たしてしまいました。わぉ。

うれしいと同時になんだか緊張もしてしまい、パパラッチに追われるんじゃないかとか、女子高生にサインをねだられたらどうしようとか、朝からそわそわしていたのですが、別に何も起きませんでした。

さすがに何もなさすぎだろうと不審に思い、同僚数名に「おれの書いたブログ、ホットエントリ入りしたんだよねー」とさりげなくアピールしてみたところ、1名を除き「へえ、おめでとう。で、それすごいの?」という冷めた反応。

残る1名にも「いくつ副垢アカ作ったんすかwwwステマ乙wwwwww」と工作を疑われる始末。

人類など滅びればいいんだ。

まあそれはともかく、ブコメを見ていたら気になるコメントをたくさん頂きました。

ディスカッションペーパーの読み方としては私もこちらが正しいと思う。後半「製品価格の値上げも同時に義務化」あたりはかなりアレだけど。
id:andalusiaさん

後半の無茶な主張はおいておいて、分析はこちらが正しいかと。付け加えると、工場の仕事は緻密な段取り、多能工化などで要求される能力が以前よりも格段にアップしていると思うので、そのあたりも多分。
id:t-murachi さん

そろそろ裕福な先進国に生まれた事によるアドバンテージを捨てるべき時なのかね。思考実験がイマイチ。
id:clonblmnさん

ネタです! ネタですからね、それ!!

退屈な経済記事のまま終わっては面白くないと思い、オチをつけようと付け足したくだりだったのですが、どうも「製品価格の値上げも同時に義務化してしまえばよかったのでは?!」の一文のためにアホの子の烙印を得てしまった模様です。

このブログがこれほど注目を浴びるのは後にも先にもこれっきりでしょうし、これを逃すと汚名を晴らすチャンスがありません。

まだPVの残り香があるうちに名誉挽回を図りつつ、ブコメで気づきもいただけたので、この機会にアレコレ思案したいと思います。

まずはじめに取り上げたいのはこちらのご意見です。

円安に誘導すればいい(ボソッ)
id:arrackさん

円安誘導による輸出産業の保護には賛成です。

ただし、短期的には。

人件費の安い途上国が次々と工業化していく中で、中長期的に円安誘導のみで競争力を保ち続けられるとはちょっと思い難いんですよね。

結局は製造業が海外に出て行くのを遅滞させる効果しかないのではないかと。

次の一手を準備するための時間稼ぎにはよいと思うんですけど、やっぱり対症療法です。

さて、そんなら対症療法ではない平均賃金向上のための施策とは何なのか、それには下記のいずれか、もしくは両方の実施が必要です。

A)低賃金労働者の所得を引き上げる
B)低賃金業種から高賃金業種へ労働者を移動する

他にもお金持ちを優遇してトリクルダウン効果を狙うって施策もあるやもしれませんが、アメリカさんを見ている限りどうも失敗したようなのでこれは除外します。

まず(A)に対して考えられるのは最低賃金のアップです。

前回の記事で書いたやつですね。

ただ、これを単体で実行すると中小企業が大量死するのが目に見えています。

雇用の需給ギャップをいい事に、国内サービス業が労働者を買い叩いたからな。/最低賃金を500円にしたところで国際競争力なんて無いんだから、1000円にして国内産業分だけでも食い止めるべきだった。
id:ysyncさん

こういうコメントも頂きましたけれど、サービス業を目の敵にしてしまうのはちょっと違う気がします。

労働力も結局は商品なので、供給が増えれば安くなってしまうのは市場原理のとおりでしょうがないことなんです。

それに最低賃金アップで本当に困るのはサービス業じゃないんですから。

いや上げ幅にもよりますが、たぶんコンビニとかファミレスとかは最低賃金が上がっても大丈夫なんです。価格転嫁をしやすいから。

問題は中小の製造業です。

中小の製造業から部品を仕入れる大手メーカーは、国内調達が値上がりするなら海外から仕入れることができます。

「この値段でできないなら海外から買っちゃうけどねー。んで、おたくはいくらで入れてくれるの?」

なんて高圧的な交渉ができるわけです。(※実際の現場のやり取りは知りません)

なので中小製造業は人件費コストの上昇分を価格に転嫁できず、苦しい状況に追い込まれてしまいます。

それならばと製造業だけ安い人件費コストで作れるよう、特別枠の最低賃金を用意するとかしては、「平均賃金を上げる」というそもそもの眼目に反しますし、補助金をぶっこんで支えるというのもおかしな話なわけです。

うーん、(A)案はどうも上手くいきません。

(A)だけ考えていても埒があかなそうなので、(B)に行ってみましょう。

このためには低賃金業種から高賃金業種に移る際の失業リスクを抑えたり、高賃金の仕事につけるだけのスキルを身につけるための職業訓練の機会が必要です。

一時期もてはやされたスウェーデンモデルというやつの一部ですね。

ベーシックインカムなり生活保護なり失業手当なり、名目はなんでもよいのですが、いわゆるブラック企業で働いている方に「こんな低賃金で働いているくらいなら会社辞めて職業訓練に就いて、次の就職先を探したほうがいいや!」と思ってもらえる社会保障を用意するという政策です。

ただ、これには重大な問題が3つもあります。

ひとつは財源の問題。

大量の失業者と倒産企業が出ることが予想できますが、その穴埋めに必要な額を現在の財政で用意するのは難しそうです。

お手本になるはずのスウェーデンからしてこんな有様なわけで。

教科書はボロボロ、バス旅行中止の自治体も

とはいえ、1990年代以降の欧州の財政難や今日の経済危機は、スウェーデン経済にも暗い影を落としている。国民一人ひとりの生活にも、目に見える影響が出始めた。

依然として教育は無償だが、レンタル扱いの教科書は何年にもわたって引き継がれる。先輩たちが使ってきたテキストは、手垢にまみれてボロボロ。テープで修理しながら使っているのが実情だ。小さい自治体はバスで行く修学旅行を取り止め、徒歩旅行に切り替えた。
スウェーデン・モデルは成功か失敗か(JB PRESS)

スウェーデンモデルが崩壊したと叩かれるのは、結局好況に支えられた「大きな政府」でなければ維持ができない制度と結論されたためではないでしょうか。

2つ目はフリーライダー(ただ乗り)の問題。苦しい仕事をしなくてもそれなりに食っていけれるのであれば、そもそも仕事に就かなくていいんじゃないかと思ってしまうのが人情です。

水は低きに流れるもの。

最近メディアを騒がせたナマポ問題がこれですね。

生活保護の不正受給

生活保護の不正受給(せいかつほごのふせいじゅきゅう)とは、生活保護制度を不正に受給することである。元来受給資格要件を満たしていないにも関わらず生活保護を受給する者、生活保護受給者として法定された義務を怠たり不正に受給する者、実際に支給されるべき金額以上の保護費を不正に受給した者およびその事例を指す。

2010年時点における不正受給件数は2万5355件、全体に占める率は1.8%、不正受給額は128億7425万円、全体に占める率は0.38%である。
Wikipedia 生活保護の不正受給

3つ目は、これはメディアで主張している人を見たことがないので私の勝手な主張なのですが、「高賃金」すなわち「高付加価値な労働」が、一体何であるかを誰が知ってるんでしょうか?という話です。

ごく最近の事例で言えば、ソーシャルゲーム業界の賃金インフレが挙げられるでしょう。

グリーでは年に2回評価があります。理論的には下がることもありますが、そういう想定はしていませんし、現実的には無いと言って問題はないでしょう。現在のマーケットの伸び、会社の成長、今の僕らの事業領域の拡大を見ると下がる要因はないと考えています。むしろもっとパフォーマンスを出せる環境になるはずですから、年収は上がると考えています。
新卒年収「最大1500万円」を打ち出したグリー “実績で評価”の新卒採用は世界展開へ弾みとなるか

うん、想定外のダウン(グリーやモバゲーの「ガチャ」禁止へ ソーシャルゲームはどう変わる? – NAVERまとめ)がこの記事の3ヶ月後にありましたが、彼らの年収がどうなったのか気になるところです。

さて、5年後も10年後も高給が見込める仕事ってなんでしょうね?

知っている方はぜひ教えてください。転職しますんで。

これがわからない以上、国策的に労働者の生産性を高めていくなんて話はちゃんちゃらおかしいと思ってしまうんですよ。

そして誰にも未来予測なんてできない以上、政府の舵取りで高付加価値産業に転換していくなんて、とんと不可能な話だと思うんです。

2回目の引用になりますが、

そろそろ裕福な先進国に生まれた事によるアドバンテージを捨てるべき時なのかね

というid:clonblmnさんの意見が正しいのかなあと思います。

日本に住む我々はもういい加減に途上国を踏み台にした贅沢を諦めなくちゃいけない時期が来たんじゃないですかね。

とはいえ、他国の貧乏に足を引っ張られて一緒に貧乏になる義理はないわけなので。

一緒に金持ちになる道を探れねえのかなあと宮沢賢治的デクノボーにあこがれるワタクシなどは思うわけですよ。

本記事の結論的には中長期的に日本国が「豊かな暮らし」を続けられる保障はないものの、とりま、ハードランディングな貧乏への道は耐え難いですので、日銀には速やかな円安施策の実施と、政府にはネットインフラという数少ないアドバンテージ(対アフリカ、東南アジア的な意味で)を活かしたコンピュータ教育を推し進めることを希望する次第であります。

すっかり長文になってしまい、ここまでお付き合いいただけた方も少ないかと思いますが、ツッコミどころなど多数かと思いますので、ブコメなりTwitterなりでご指摘いただけますと幸いでございます。

実はまだ少子化の問題に対して言いたいことなどあるわけですが、それはまた別の機会に。

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