朝日新聞が炎上した「バードストライク」について調べたら、ひとつの産業を成すほどに深い問題だった


朝日新聞さんのこちらのツイートが絶賛炎上中の模様です。

朝日新聞記者 「鳥がぶつかったくらいで飛行機がへこむものなんでしょうか?」(痛いニュース)
朝日新聞北海道報道センターさん、バードストライクを学ぶ(toggeter)

批判されているのは下記の3点のようです。

  • 報道に携わる人間なのに無知すぎる。知らなかったとしても、物理の基本がわかっていればこんな疑問はありえない
  • マスコミならつぶやく前に調査すべき。情報発信の姿勢を疑う
  • わざわざ「格安航空ピーチ」としているところに「格安だから安全対策が不十分」とミスリードを誘う意図が感じられる

2番目3番目の批判については、言われてみればそうかもなあと思ったものの、1番目について私は語るべき言葉を持ちません。なぜなら、私もバードストライクで主翼が凹むなんてことがあるとは知らなかったから。鳥がエンジンに飛び込んだ場合のみ、大きな事故につながるんだろうと思っていました。

ところが、高速飛行中に鳥が衝突する威力は相当なものな上、軽量化された飛行機の装甲はさほど強力なものではないようで、時には軍用機でさえ致命的なダメージを負うようです。(※下記リンクは閲覧注意。グロいです)

【海上保安庁】哨戒機にアホウドリがバードストライク 機首に1メートルの穴(大艦巨砲主義)

砕けた機首にアホウドリが突き刺さっています。原型を留めているのがまた無残です。

さて、Wikipediaによれば、そもそもバードストライクとは航空機にかぎらず、鳥が人工物に衝突する事故全般を指す言葉の模様。直訳すれば「鳥の衝突」ですから、当たり前といえば当たり前なのですが。

バードストライク(Wikipedia)

ググってみると、個別の具体事例もけっこうヒットします。ちょっと並べていってみましょう。

電車とのバードストライク(閲覧注意)

たとえが不謹慎ですが、漫画みたいに見事にかっ飛ばされています…。飛び散る羽毛が無惨です。跳ね飛ばされる速度から、衝撃のすごさがわかります。

Youtubeで「バードストライク」「bird strike」などで検索するとじゃんじゃかヒットするので、衝撃映像好きの人は調べてみるといいでしょう。私は2~3本見ておなかいっぱいになりましたけど…。

風車(風力発電機)とのバードストライク

風力発電によるバードストライクについて(公益財団法人日本鳥類保護連盟)

風力発電機の設置には、安定した風が発生するところが好適地だそうで、そこは同じく風を利用して飛ぶ猛禽類やカモメ類の生息地とかぶるんだそうです。航空機と違って風車は固定されていますから、どうして鳥がぶつかってしまうのか疑問ですね。

で、調べてみたところ、「モーションスメア」という現象が原因のひとつとして考えられている模様。

モーション・スメア(猛禽の森)

遠目ではゆっくり回転しているように見える風車のブレードも、先端付近では時速150km~300kmに達するそうで、接近すると視認できなくなってしまうそう。文字通り「目にも留まらぬ」状態になってしまうわけですね。なるほど。

リンク先によれば、レーゼー光線などを使って視認しやすくした場合の実験でも、数十メートル先からブレードが見えなくなってしまうそうで。そりゃあ衝突もしますわな。

自動車とのバードストライク(閲覧注意)

自動車でのバードストライク(X5-BMW.ORG)

こちらは個人の事例。高速道路を走行中に鳥が衝突し、キドニーグリルにめり込んでしまったというもの。簡単には引き抜けず、グリルを拡げてなんとか取り出したそうです。

おそらく時速50km未満で衝突したとのことなのですが、それでもこんな威力なんですね…。

個人宅とのバードストライク

バードストライク(魔法使いの森)
バードストライク(北の水辺から)

住宅のように、完全に静止した建物であっても鳥との衝突事故は起きるようです。ガラスが空や景色を反射するため、障害物に気がつかず突っ込んでしまうとかなんとか。

人間だってよく磨かれたガラスに突っ込んで顔をぶつけることがありますし、一概に鳥目だの鳥頭だのバカにできないと思いました。

バードストライクの原因と対策

想像以上に幅広かったバードストライク問題。とくに空港では、ある事情から鳥類が集まりやすいみたいです。

鳥の好物は空港の虫? バードストライク対策に悪戦苦闘(朝日新聞)

空港では景観や保安上の目的から草刈りをしっかり行うそうなんですが、草が短いと昆虫が見つけやすくなり、それを狙って鳥がやってくるんだそうです。

空砲や花火、スピーカーで「鳥が絞め殺されるときの声」を流したりして追っ払おうとしているらしいんですが、なかなかうまくいっていない様子。っていうか、「鳥が絞め殺されるときの声」ってすごいな。そんな音源売ってるのか。ちなみに、「ディストレスコール」というそうです。

これらの他にも、ITを駆使したり、忌避剤を開発したり、コンサルティングをする会社があったりとバードストライク対策はひとつの産業となっている模様。ニッチだとは思いますが、市場規模がどれくらいなのか気になります。NECが参入するくらいだし、意外と大きいのかもしれない。

NEC、バードストライク防止に鳥位置検出ソリューション – 羽田空港が採用(マイナビニュース)
バードストライク対策【SYMBIO 小動物天然回避剤】(株式会社 ディーエヌエーバンク・リテイル)
株式会社 応用生物 トピックス バードストライクに関する記事

さくっと調べるつもりが、たったこれだけで1時間あまりもかかってしまいました。バードストライクって、単純に見えるようで実はかなり深い問題なんですね。驚きました。


(同日追記)

いろいろと興味深いコメントをいただきましたので、さっそく追記します。

そこはランディ・ジョンソンの鳩殺害動画を貼るところでしょうが!
id:Arturo_Ui

はわわわ! そういえば。せっかくなので貼り付けておきます。

「バイク カブトムシ」でググると身近なバードストライクを体験出来て幸せになれない。
id:zeromoon0

ホントだすごい。幸せになれない。

バードストライクやばい。グライダーで飛んでてもたまにある。というかあった。その時は相対速度が遅いので翼の前縁に羽根と血痕が付着する程度だったけど。
id:bloglider

グライダーでもそんなことになっちゃうんですね。。。

そういえば小学校の教室の窓ガラスに鳩が突っ込んできたことあったなー男子もよく突っ込んでたけどねHAHAHA
id:thyme56

あるあるw 年に何枚のガラスが犠牲になっただろう?

信号待ちで立っていたら鳩が突っ込んできたことあるで。こっちは止まってたから過失責任10:0で鳩が悪いと思う。その後隣のおっちゃんが「鳩は美人が好きだから」とか言って居酒屋トーク展開になり面白かった。
id:yoshikogahaku

ハトだからって何でも許されると思うなよ! 私だって許されるんなら美人さんに(自主規制

良かったー、エンジン以外の例を知らなかったことが言える場があって。
id:houjiT

ですよねー。私もこの記事書くのにちょっと勇気が要りました。

どうでもいい話だけど、リンクにあった「アホウドリが哨戒機にバードストライク」の記事に出ていた鳥は明らかにアホウドリではない。翼のサイズとカラーリングから言っておそらくカツオドリだろう。
id:Diomedeidae

あの写真からそんなことまでわかるとは…。すごい。こういうのがインターネットの醍醐味だと思いました。

あわせて読みたい 「風車と翼(CONPLEX CAT)」
id:t-sat

風力発電機の環境負荷について論考した濃ゆい記事。勉強になりました。なお、リンクがはてな記法だったので、その箇所のみ修正させていただきました。

おおう…確かに「外板」の方が適切ですね。表現が思いつきませんでした。ボキャブラリーが足りないなあ。

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