日本ではもはや風刺が成り立たないのかもしれない – 日本ユニセフと虚構新聞の炎上に寄せて


日本ユニセフさん界隈が盛り上がっております。発端は元だか現だかよくわからないことになっている2ch管理人のひろゆき氏のこちらの記事。

アグネス・チャンさんへの公開質問状(ひろゆき@オープンSNS)

黒柳徹子女史に寄付をすれば100%現地に送金されるのに、どうしてアグネス女史は約20%の運営費が中抜きされてしまう日本ユニセフへの募金を勧めるの?という話。そりゃアグネス女史は日本ユニセフの広告塔ですから、他の個人や団体の寄付を勧めるわけにはいかないだろうと思うのですが、以前から児童ポルノ法のあれこれでネット民の一部から憎まれていた関係でけっこうな火勢になってしまった模様。

そんな焼け野原にネット界の東スポ「虚構新聞」さんが「日本ユニセフ、寄付金の流れ透明化へ」という記事を引っさげて乗り込んだわけですが、日本ユニセフさんからの抗議にあって記事を削除してしまいました。

このへんの流れや元記事については、以下にまとめられています。

いつまで虚構新聞なんか信じてんの(はてな匿名ダイアリー)
虚構新聞は死にました(今日も得る物なし)

どちらの記事も虚構新聞に対し否定的な論調です。私も、くだんの記事はあんまり好みではありませんでしたが、今回はそれとは別の話。

日本ではもはや風刺って成り立たないんじゃないでしょうか?

ふう‐し【風刺/×諷刺】
[名](スル)社会や人物の欠点・罪悪を遠回しに批判すること。また、その批判を嘲笑的に表現すること。「―のきいた小説」「時代を―する」
引用元:goo辞書

辞書的な意味は上記のとおりなんですけれど、私のイメージする風刺とは、「直接批判すると攻撃を受けかねないので、それをかわすために行われる婉曲な表現行為」なんですよ。

たとえば、旧ソ連下におけるこういうジョーク。

ロシアにある「赤の広場」で、男が「スターリンは馬鹿だ」と叫びながら走り回っていた。
当然男は逮捕され、裁判の結果懲役25年が言い渡された。

刑期のうち5年は侮辱罪、残りの20年は国家機密漏洩罪であった。
引用元:世界史ジョーク

本邦でも江戸時代には幕府を批判する狂歌が流行ったそうで。教科書にも載っている有名なものがありますね。

白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋しき
引用元:田沼時代(Wikipedia)

旧ソ連統治下や寛政の改革の折にこれらのジョークがどんな風に受け止められていたのかは浅学にして知らないのですけれど、普通に批判をしたら命の保証もされないような権威に立ち向かっていく気概やスリルが当時の庶民にウケたのではないかなあと想像します。

風刺ってものには、こういうスレスレの感覚が必要なんじゃないですかね。

では、現代日本においてこうした風刺の対象になるものはあるのかといえば、残念ながらというべきか喜ばしいことにというべきかほとんど存在しない。政府も大企業もマスコミもさんざん叩かれております。強いていうなら、さるやんごとなき尊き血筋の方々を批判するのにはかなり勇気が要りますが、それだって一部女性週刊誌の十八番だったりするわけで。言論の自由ってすごい。

いまの日本で一番批判するのに勇気がいる対象は実はむしろ叩いている側の大衆なのかもって気がします。こんな零細ブログですら、ちょっとでも叩かれている側をかばうような記事を書くと非難のコメントが浴びせられてきたりしますし。

まあでも、これって国民が最高の権威になりかかってるって意味では最高に健全なんですよね。衆愚だなんだといいますけれど、民主主義的には正しい状況なのかなあなんて愚考した次第。


(2013/11/19追記)
どうも虚構新聞さんの擁護記事だと誤読させてしまったようなので追記しました。

虚構新聞に言及したら延焼したので記事解説と原因分析(反省と対策)

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One thought on “日本ではもはや風刺が成り立たないのかもしれない – 日本ユニセフと虚構新聞の炎上に寄せて

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