台風だしKindleストアで買えるオススメSF小説10選


台風第18号が襲来中。窓の外では豪雨烈風が吹き荒んでおります。全国的に各種警報も発せられている模様で、こんな日は外出を控えて自宅でおとなしく本でも読んでいるのが無難というものです。

というわけで、自宅にいながら本が買える便利な便利なKindleストアで買える面白SFを10作品ほど紹介してみます。「オススメSFxx選」というテーマの記事はときどき見かけるのですが、買おうと思ってもKindle化されていなくて切なくなることしばしば。こういうエントリも需要あるんじゃないかなー。

んでは、オススメ順で参ります(甲乙つけがたいものが多いんですが)。あらすじはamazonより引用です。

目次

  • 都市と星(アーサー C クラーク)
  • 百年法(山田 宗樹)
  • マルドゥック・スクランブル(冲方 丁)
  • 虐殺器官(伊藤 計劃)
  • ハーモニー(伊藤計劃)
  • 太陽の簒奪者(野尻抱介)
  • 戦国自衛隊(半村 良)
  • 新世界より(貴志祐介)
  • 月は無慈悲な夜の女王(ロバート A ハインライン)
  • ハイペリオン(ダン・シモンズ)

都市と星(アーサー C クラーク)

遙か未来、銀河帝国の崩壊によって地球に帰還することを余儀なくされた人類は、誕生・死さえも完全管理する驚異の都市ダイアスパーを建造、安住の地と定めた。住民は都市の外に出ることを極度に恐れていたが、ただひとりアルヴィンだけは、未知の世界への憧れを抱きつづけていた。そして、ついに彼が都市の外へ、真実を求める扉を開いたとき、世界は…。巨匠が遺した思弁系SFの傑作、待望の完全新訳版。

最近読んだSFの中でも群を抜いて面白かったのがこれ。10億年に渡り不死不変の都市ダイアスパーを舞台に繰り広げられる物語は、次々と壮大さを増していき、こんな大風呂敷を広げて収束するんかいなと不安にさせられます。しかし、そんな不安はまったくの杞憂です。物語の後半では「ここでラストでもOKでしょ!」というクライマックスが幾度となく繰り返され、縦横無尽に張り巡らされた伏線も全回収。中だるみもなく、これほど綿密で起伏に富んだストーリーは他に類を見ません。

『巨匠が遺した思弁系SF』なんて書かれると敷居が高く感じられそうですが、ノリは冒険小説なので、小難しいことを考えずすっきり楽しめる1冊でした。

百年法(山田 宗樹)

原爆が6発落とされた日本。敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。そして、西暦2048年。実際には訪れることはないと思っていた100年目の“死の強制”が、いよいよ間近に迫っていた。経済衰退、少子高齢化、格差社会…国難を迎えるこの国に捧げる、衝撃の問題作。

あらすじを読んで村上龍の「五分後の世界」っぽい世界観なのかなあと思ったのですが、別にそんなことはありませんでした。二次大戦が泥沼化したのは同じですが、その後は現実の日本史と近い歴史を重ねています。

そこにぶち込まれているSF要素が「不老化処置」。無限の寿命を得てしまった社会が抱える病理をリアルに描き出した佳作です。政治闘争の描写が多いので、大人向けの1冊ですかね。

マルドゥック・スクランブル(冲方 丁)

なぜ私なの?賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットは爆炎にのまれた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にして万能兵器のネズミ、ウフコックだった。法的に禁止された科学技術の使用が許可されるスクランブル−09。この緊急法令で蘇ったバロットはシェルの犯罪を追うが、そこに敵の担当官ボイルドが立ち塞がる。それはかつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした男だった。代表作の完全改稿版、始動!

厨二っぽいあらすじ文と美少女な表紙で損をしてるんじゃないかなーと思う1冊。いや、あらすじは間違っちゃいないんですが、もうちょっとハードボイルドな雰囲気で紹介したほうが内容と合うんじゃないかな。

全3巻ですが、そのうちほぼ半分はカジノでのギャンブル対決に割かれている異色作です。手に汗握る心理戦はアカギやカイジにも劣りません。SF的ガジェットやアクションシーンも多く、一級の娯楽作品に仕上がっています。

改造美少女バロットと、生体兵器ネズミのウフコックの異種間恋愛模様も背徳感があってステキです。子どもに読ませちゃいけません。映画化もされているらしいです。

虐殺器官(伊藤 計劃)

9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。

過去に単独でも紹介しているので、詳しくはそちらをご覧ください。

SFの金字塔「虐殺器官」をスプラッタホラーだと思って敬遠する人は損をしているので感想を書く[ネタバレあり]

ともかく緻密なSFガジェット描写がたまらんです。ガジェットだけではなく、それによって変化した社会のあり方や、軍隊行動がリアルで面白い。ストーリーは「破綻なくまとまっている」というレベルだと思うので、設定オタ的な読み方がオススメであります。好き嫌いはかなり分かれそう。

ハーモニー(伊藤計劃)

21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。

必殺、伊藤計劃重ねの術。とくに明示はされていませんが、「大災禍」とは「虐殺器官」で引き起こされた惨事を指しているようで、本作は虐殺器官のゆるやかな続編と見ていいかもしれません。物語的な連続性はないので、こちらだけ読んでもまったく支障はないのですが、あらかじめ虐殺器官を読んでいると「あの後にこんな世界が繰り広げられるのか」とニヤニヤできること請け合いです。

行き過ぎた技術が人間を不幸にする、というモチーフはSFの伝統芸ではありますが、緻密に重ねられた描写が陳腐さを消しています。虐殺器官よりはストーリー重視な印象です。

太陽の簒奪者(野尻抱介)

西暦2006年、水星から突如として噴き上げられた鉱物資源は、やがて太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により、破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でこの巨大リングを創造したのか?―異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが…。新世紀ハードSFの金字塔、ついに文庫化。

異星文明と人類の最初の接触を描く、いわゆるファーストコンタクトものの傑作です。人類初の宇宙戦争はきわめて地味に、しかし悲惨に繰り広げられます。太陽の簒奪者たる宇宙人の目的・思惑は一体なんなのか。ラストは肩透かしめいてもいますが、実際文明レベルが離れすぎるとこれくらいのズレが生じてもおかしくない気がしました。

戦国自衛隊(半村 良)

新潟・富山県境に演習を展開していた自衛隊一個中隊が、ヘリコプター、装甲車、哨戒艇もろとも突如、戦国時代にタイムスリップした!彼らの前に現れたのは長尾景虎と名乗る武将、すなわち後の上杉謙信であった。景虎の越後平定に力を貸すことを決意した伊庭三尉率いる中隊は、現代の兵器を駆使して次々と諸将を征圧していくのだが…。果たして歴史は塗りかえられるのか?異色SFの傑作。

この辺で一本軽めのを挟んでおきます。過去2回映画化されており、ドラマや演劇作品にもなっているそうなので、ご存じの方も多いでしょう。しかし、原作を読んだことのある人は少なそうな気がします。かくいう私も先日はじめて読みました。

映画では燃料切れや原始的な罠で近代兵器が無力化されるとともに伊庭三尉率いる戦国自衛隊が打ち破られる展開だったと記憶しているんですが、原作では近代兵器が使えなくなった後も現代の知識を内政や軍事作戦に活かして活躍を続けます。

ミリオタ御用達っぽい作品と思われるかもしれませんが、兵器も含めて全体的に描写はあっさりしており、コロコロ進むストーリーを脳天気に楽しめるエンタメ作品です。SF要素はタイムトラベルしかないので、コアなSF好きには物足りないかも。

Wikipediaによれば「もし現代の兵器や人間が過去に現れたら」という架空戦記ものの草分けだそうで、本作がなければかわぐちかいじの「ジパング」や、最近ドラマがスマッシュヒットを飛ばした「JIN―仁―(村上もとか)」も生まれていなかったかもしれませんね。

新世界より(貴志祐介)

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。

これも以前に感想を書いた作品です。

オカルトSF小説「新世界より」がRPGみたいで面白いので感想を書く[ネタバレあり]

そちらにも書いたんですが、魔界都市〈新宿〉シリーズと月間ムーを合わせたようないかがわしいあらすじで損をしているように感じます。

本作の面白さは1000年後の日本の生態系の描写だと思うんですね。住民に使役される異形の「バケネズミ」、七色に輝く軟体巨大げじげじ「ミノシロモドキ」に、炸裂する卵を産む「カヤノスヅクリ」、土中で光り光源にも利用される「ツチボタル」などなど、椎名誠のSF3部作やナウシカの腐海を彷彿とさせる特異な生態系がなんともいえない没入感をもたらします。

ストーリーも謎あり冒険ありド派手な戦闘ありで、3巻に渡る長い作品にも関わらず、ラストまで飽きることなく読めるでしょう。

月は無慈悲な夜の女王(ロバート A ハインライン)

2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには…ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇。

歌舞伎町に君臨するナンバーワン・キャバ嬢の話、ではありません。圧政に苦しむ月世界人たちが、月世界のすべてを牛耳るAIの力を借りて革命を成功に導くまでを描いた作品です。

電話が有線だったり、プログラムがパンチシートだったりと時代がかった描写が多いのはご愛嬌。面白いのは革命のノウハウについてのくだりで、歴史にある数々の革命はこんな風に行われたのかなあとか、でもエジプトの革命には実質的な指導者はいなかったらしいよなあとか、そんなことを考えながら新鮮な気持ちで読めました。

地球政府との虚々実々のやり取りも生々しく、SF的な道具立てよりも、政治闘争劇としてたいへん面白い。先に挙げた「百年法」が楽しめた方なら、こちらも好きになるんじゃないでしょうか。

ハイペリオン(ダン・シモンズ)

28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡―古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める“時間の墓標”が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く“時間の墓標”の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが…。ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。

これは正直、取り上げるかどうか悩みました。名作としてあちこちで紹介されていますし、面白いことは面白いんですが、修飾過多な美文調が読みづらく(演出上の狙いだとは思うものの)、またラストが伏線投げっぱなしジャーマン状態という。

訳者あとがきによれば、後者は続編の「ハイペリオンの没落」で伏線回収されるそうなんですが、肝心のそれがまだKindle化されていないんですよ。。。

おっと、感想をまだ書いていなかった。ハイペリオンに棲まう異貌の神(兵器?)シュライクにまつわる7人の物語を、それぞれの立場から語るという体裁をとっており、連作短編の趣です。1人1人の物語はクトゥルー調のホラーめいたものから、純文学調、冒険小説調と多岐にわたっており、ダン・シモンズの芸の広さを感じます。

いかんせん回収されない伏線が多すぎて据わりの悪さが残るのですが、そのへんは「ハイペリオンの没落」できっと解消されることでしょう。っていうか、されなきゃ困る。

この他にも「天冥の標(小川一水)」とか、「アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス)」などもオススメなんですが、前者はまだ完結してないし、後者はKindle化されていないので見送り。「沈黙のフライバイ(野尻抱介)」も面白かったんだけれど、地味だし一般受けしなそうなのでやめておきました。

SFに限らなければ、「黒い春(山田宗樹)」「豆腐小僧双六道中(京極夏彦)」「震える牛(相場英雄)」「ガダラの豚(中島らも)」が最近読んだ中では面白かったです。

さて、次は何を読もうかしらん。

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