内定辞退が増えている!というデマ


「椅子に座らされ、1時間にわたって罵詈雑言…泣くに泣けない「内定辞退」の現実」はデマではないか?』という記事を書いたところ、はてブ(twitter連携)でこんなご指摘をいただきました。

確かにいわれるとおりで、私は過去の経験に基づいた推測で話をしているだけで、もしかしたら本当にそんなケースが増えているのかもしれない、と反省しました。最新の情報っていっても、ニュースを見たり、元同期の人事と時々飲んで話を聞くくらいだし。

私は娯楽として楽しめるオカルトや都市伝説は大好きですが、誰かをミスリードして傷つけたり不幸にするデマやウソは最も嫌うところです。

自分がその発信源になってしまってはどうしようもないなと思い、きっちり数字を当たってみることにしました。

とはいえ、内定辞退にまつわるトラブルは事件化されるわけでもなく、信頼できる調査データは知る限りどこにもありません。

そこで、別の数値から間接的に事実を推測したいと思います。

私が批判した元記事には以下のように書かれていました。

 近年は学生の大手志向が強くなった影響で、一部の企業に学生が集中しています。結果として、内定を獲得できない学生が増え、就職活動生の危機感をあおることになりました。さらに、リーマンショック後は「内定取り消し」という行為を企業が行ったため、企業への強い不信感が学生に募るようになりました。

 こうした状況は、就活のやり方をどう変えたでしょうか。リスクヘッジをしなくてはならなくなった学生は、数多くの企業を受け、数多くの内定を獲得するという行動に出ました。つまり、質より量を求め始めたのです。そして、企業が新卒に求める人物像が似通っている関係で、一部の学生に内定が偏るようになりました。複数社の内定を保持している学生であっても、当然ながら入社できるのは1社しかないため、その他企業は辞退する必要が出てきます。こうして、多数の内定辞退を生み出す状況になりました。
引用元:椅子に座らされ、1時間にわたって罵詈雑言…泣くに泣けない「内定辞退」の現実(2ページ目)
※太字は私の編集です。

さて、一部の学生が多数内定を獲得するようになり、そのために内定辞退が増えたといいますが、これは事実でしょうか?

マイナビの提供する人事向け情報サービス「マイナビ採用サポネット」で公表されている調査データを元に真偽を確認してみましょう。(本当はリクルートの就職白書を使いたかったんだけど、過去データを公開してないようで。昔は全部公開されてた気がするんだけど、記憶違いかな?)

データは下記から誰でも確認できます。

学生の採用活動に関する企業調査−バックナンバーより内定状況調査
学生アンケート−バックナンバーよりマイナビ大学生就職内定率調査

グラフを作るほどのものでもないのでべた書きで失礼します。

まず、企業調査のほうから。

2008年卒から2013年卒で内定辞退者がひとりも出なかったと応えた企業の割合を抜粋します。

■内定辞退者がひとりも出なかった企業の割合
2008年卒 16.0%
2009年卒 18.9%
2010年卒 26.2%
2011年卒 27.0%
2012年卒 26.5%
2013年卒 28.3%

あれれ?内定辞退が増えているどころか、内定辞退者がいない企業の方が増えているようですね。

むしろリーマンショックを期に辞退者数は急減しています。これは採用を絞る企業が増えたために、ひとつの内定の重要性が増したためとも考えられそうです。

また、東日本大震災の前後でも目立った変化はありません。

次に、学生の平均内定保有社数です。

就職活動の途中に間違いなく入社しない企業を辞退しつつも、よりよい就職先を探して活動を継続するケースがあるので、調査期間中で最も多い社数を並べます。

■学生の平均内定保有社数(調査期間中の最多)
2011年卒 1.6社(5月調査)
2012年卒 1.6社(5月調査)
2013年卒 1.7社(7月調査)

一応増加はしているものの、誤差の範囲内と言っていいでしょう。内定辞退をするためには複数内定が必要なのに、とくに内定保有数は増えていないようですね。

こちらで挙げた例が少ないのは、この項目の調査データが2011年以降しかないためです。決して恣意的に選んだり、サボったわけではないのでご了承のほどを。

はてさて、これらの数値を素直に読みますと、内定辞退はぜんぜん増えていないといえます。

就職活動のプロであろう内定塾の講師ともあろうお方が、現役を離れた元新卒求人媒体営業でも調べられることもご存知ないとは不可解ですね。

まあ、最近自殺者などが出てブラックぶりが衆目にさらされた某企業などでは辞退が増えた、というか応募者そのものも減ったでしょうが、全体において内定辞退にことさら冷たくなるような状況にはないと結論してよいのではないでしょうか。

というわけで、学生さんはことさら内定辞退を伝えることにおびえなくて大丈夫だと思いますよ。

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