ニセ科学を殺すのはリテラシーではなく宗教である


こんな記事を読みました。

ニセ科学をバカにする前に ~科学という名の宗教~(雪見、月見、花見。)

読み応えのあるユニークな視点のエントリなのですが、『「ニセ科学」に対する科学的な闘い方』という章の、

結局のところ、「ニセ科学」が出たら粛々と淡々と疑問点をあげつらい、反論する他ありません。

この部分、これはちょっといただけない。たぶんこの路線で戦ってもニセ科学はやっつけられないと思うのです。

いま猛威を振るっているニセ科学を、宗教に見立ててざっと並べてみます。

  • EM菌教 … イスカンダル産のEM菌を使えば放射能はなくなります。
  • 上杉隆教 … 大マスコミや政府は真実を伝えない。真実は上杉隆ひとつ!
  • ホメオパシー教 … 砂糖玉食えば治る!(どーん!!)
  • マルチ教 … MLM教、ネットワークビジネス教とも。人間関係を生贄にささげ小銭を召還する。
  • 引き寄せ教 … 念じよ、さらば叶えられん!ただし努力はしない!!
  • スピリチュアル教 … 週末はパワースポットでポケットにはパワーストーン。運動と重量で筋肉が鍛えられます。
  • ライフハック教 … スケジュール管理アプリだけで5つは入っている人々。
  • 秒速で1億円稼げる教 … ただしアメブロはBANされる。
  • 月々5万円の積立で1億円は貯められる教 … 利率計算に高等数学はいらぬ。算数があればそれでいい。

うん、まあなんか、他にもありそうな気がするけど、キリがないのでこのへんで。血液型占いとか、マイナスイオンだとかは別に実害がないので放っておいていいんじゃないでしょうか。

こういうのを信じちゃう心理の根っこはどれも同じなんです。現在の科学だとか、合理的な手順ではインスタントに解決できない問題にすごくお手軽な解法を授けてくれるんですよ。放射能とか、不治の病とか、上手くいかない仕事のこととか、貯まらないお金とか、一向に引き寄せられて来ない南沢奈央とか、なんとかなっちゃうんならニセ科学でもかまわないので私も入信するんですけれども。

要はですね、ニセ科学は現状の科学に対するアンチテーゼとして広まってるわけじゃなく、単純に不安につけこんで広まってるんじゃないかと。喪黒福造があれこれに化身して民草を惑わしておるのです。

それに対して「科学的に間違っているよ」という指摘はほとんどの場合で無力です。だって信徒のニーズは「科学的な正しさ」ではなく「安心」なのですから。安心を与えられない科学は残念ながら受け入れられません。過去にマルチにはまった知人を何人か、科学的な説明と事実を用いて折伏しようとこころみたことがありますが、すべて徒労に終わりました。かなしい。むなしい。

じゃあどうしたらいいの、という話ですが、要は不安な状態を解消してニセ科学のつけこむ隙をなくせばいいわけです。

マーケティングの基本、マーケットインで考えてみましょう。迷える子羊たちのニーズは「安心」です。しかもなるべくお手軽に叶えられるやつ。あれこれ勉強したりする必要があると、導入コストの低いニセ科学に負けてしまいます。どんなプロダクトならニセ科学を超えて普及できるでしょうか。

それが宗教です。

民草の人心を治めるために何千年も用いられてきた、この強力なツールを活かさない手はありません。

仏教でもキリスト教でもイスラム教でもなんでもいいんですが、個人的には大乗仏教各派がおすすめ。南無阿弥陀仏と唱えるだけのカジュアルな関わり方から、哲学的に突き詰める奥行きまでそなえており、趣味にもぴったり。写経をすればユーキャンの講座を取らなくても字が上手くなりますし、檀家の集まりを通じて地域のコミュニティにも参加できます。あっ、いうまでもありませんが、多額なお布施を要求してくる変な宗教にはかかわっちゃいけません。

元記事でも触れられているとおり、かつての宗教は「ある事象に合理的な説明を加える」役割を果たしていました。風が吹くのは風神様が息をするから、山神様がお怒りになられるでウリボウは獲っちゃなんね、とかとか。

科学がこういう素朴な解釈を駆逐していく過程で、勢いあまって科学では代替できない機能まで破壊してしまったことが、ニセ科学が蔓延する土壌を作ってしまったのだと思います。

そんなわけで、ニセ科学を殺すのにはリテラシーは要りません。週末はおしゃれな古寺で煎茶をすすりつつ、坊さんのライブを楽しむようなライフスタイルを広めていくのが低コストでよろしいんじゃないでしょうか。

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2 thoughts on “ニセ科学を殺すのはリテラシーではなく宗教である

  1. >血液型占いとか、マイナスイオンだとかは別に実害がないので
    なにを根拠に仰っているのか。
    実害は山のようにあるよ。

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