「半澤直樹」原作三部作の感想 – 上司にキレる前にこれを読もう


ドラマ「半澤直樹」が未曾有のブームらしいです。

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視聴率30%って、だいたい3人に1人は視聴しているってわけですか。子どもが見るようなドラマではないので、通勤電車に乗り合わせた人間に限れば2人に1人は見ているかもしれない。なにそれやばい。紅白か。半沢を見なければ人にあらずってな勢いですね。

テレビドラマってずっと衰退の一途にありましたので、今回の「半沢直樹」のヒットは様々な話題を読んでいるようです。テレビドラマ不振の原因を分析してみたり、24時間テレビ批判に飛び火したり、Twitterで理系クラスタ大喜利がはじまったり。

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名台詞「倍返しだ!」は今年の流行語大賞候補間違いなしですかね。なかなかリアルで口にする機会はなさそうですが。

そんなわけで、あんまり流行りモノには興味がない私ですけれども、多少は触れておかなければ具合が悪いなあと思い、この前ドラマを観てみました。壇蜜扮する敵役の愛人が半沢に説得されるシーンの回だったんですが、これを観て面白そうだなと思いました。

でも、毎週決まった時間にテレビを点けるのはしんどいし、録画機器もない。となれば原作を読むしかないわけじゃないですかっってわけで原作の3部作「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」「ロスジェネの逆襲」(池井戸潤/ダイヤモンド社)をぽちってしまいましたよっと。いちいち書店に行かなくても、すぐに読みたい本が買えるってすばらしいですなあ。Kindle万歳です。

いつものように枕が長くなりましたので、そろそろ感想をば。一冊ずつ筋書きと感想を述べていってもまどろっこしいので、「半沢直樹」がなぜ“スカッと気持ちいい娯楽小説なのか”というポイントに絞って描いてみたいと思います。

以下、目次。

  • 上司にも取引先にも容赦しない!
  • 同期の友情が厚い!
  • でも、腹芸も裏ワザも使う大人のいやらしさがある

上司にも取引先にも容赦しない!

原作小説の半沢直樹は正義の人です。「やられたらやり返す!倍返しだ!」という台詞からは利己心が強い人柄が連想されますが、個人的な復讐心に駆られてそれを行うというより、スジを外れた非道を行う相手に対する義憤が勝る人物に描写されています。理不尽な責任の押し付けには徹底して抗うけれど、自らの責任は潔く全うする極めて誠実な男です。

こうかくとやたらにおキレイな感じで気持ちが悪いんですが、半沢が露悪的な態度をしているので鼻につきません。このあたりのさじ加減は筆者のうまさを感じます。

んで、そんな誠実さに頑固さが加わっておりまして、権力を背景にした恫喝などには一切屈しないわけです。相手が部下だろうが上司だろうがおかしいことにはおかしいといい容赦しない。脅されようが懐柔されようが、ことごとくはねつけて筋を通そうとする。

これがたいへん気持ちいい。

「人事がすべて」とされる銀行でなくとも、勤め人なら誰だって上司の顔色を伺って意見を曲げた経験があると思います。「あのとき自分の意見を無理矢理にでも通していれば…」という後悔は共通のものなんですね。

でも、半沢は決して自分を曲げない。そして判断を間違えない。実際には「上司の判断に逆らって失敗する」ってケースも多いわけで、その辺はまあフィクションだからなあと思うものの、やっぱり清々しいですよ。

こうして世のサラリーマンは半沢の姿にかつて葛藤した自分を、あるいはいま葛藤している自分を重ねて開催を叫ぶわけですな。とくに、さんざん半沢を攻撃してきた上役に反撃するクライマックスは、どの巻でもカタルシスに溢れています。

友情に厚く、仁義もある

次にこれ。半沢には同期入行の仲間が何人かおり、彼らが目となり耳となり動いてくれることで窮地からの突破口を開いてくれます。

現実には、同期だからってだけでそこまで親身になれることはほとんどないでしょう。そもそも、中途入社であれば同期なんて存在しないわけで、半沢直樹における同期同士の友情は完全にファンタジーです。

しかし、だからこそ「こんな理想の同期の友情を築きたかった!」という欲求を揺さぶるんでしょうな。私自身は、あんまりそういうことを考えたことないですけど。

でも、腹芸も裏ワザも使う大人のいやらしさがある

上の2点だけですと、半沢がずいぶん清廉潔白な人物に見えますが、そんなことはありません。大事の前の小事とばかり、目的のためには手段を選ばないわけです。上司の荷物をあさったり、金融庁検査を逃れるために資料を隠したり、弱みを握った相手を脅しつけて言うことを聞かせたり、なかなかにダーティです。

この要素のおかげで、半沢直樹は大人の鑑賞に耐える作品になっています。「友情」「努力」だけでは世の中わたっていけないわけですよ。清濁併せ呑む悪漢的な人物設定が半沢を魅力的なキャラクターにしています。

話の筋はあんまり紹介していないですけれども、3作とも基本的には「悪役の上司と取引先に行ったんは窮地に立たされる主人公が、あらゆる策を弄して反撃する話」です。銀行が舞台とあって、小難しい金融用語なども出てきますが、それらも噛み砕いて説明してあるのでちんぷんかんぷんになることはないと思います。

上司や組織に反感を持ったことのある人なら、読めば必ずスカッとする上質のエンターテイメントだと思います。たまりかねて上司にキレる前に、これを読むとよいガス抜きになるかもしれません。

……ところで、上司や組織に反感を持ったことのない人っているのかしらん?

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