「お金以外の働く意味」はあるけど別に必須じゃない


「人力検索はてな」に匿名の質問が上がっていたので、実名で全力で答えてみる。

質問者は中学生で、学校の職業体験教育で「お金以外のために働くことが大切・幸せなのだ」と教わったそうです。

お金以外の働く意味について教えて下さい。(人力検索はてな)

以下、質問者に向けて書いていきます。

31歳、株式会社ネクストでLococom(ロココム)というインターネットサービスの運営をしています。転職暦は2回です。

まず質問の意味をはっきりさせようか。きみが聞きたいのは、「個人にとっての働く意味」なのか「社会にとっての働く意味」なのか、どっちだろう。

後者なら答えは簡単だ。世の中を滞りなく回していくためだね。電車の車掌さんが好き勝手に仕事を休んだらみんな困ってしまうし、農家や猟師が仕事をやめると食べ物がなくなって飢え死にしてしまう。そんなに大げさじゃなくても、君だって、楽しみにしていたゲームの発売日が延期されたら、「開発者はちゃんと仕事しろ!」と思うんじゃないかな。

でも、授業で「お金以外のために働くことが大切・幸せなのだ」って教わったことに疑問を感じたってことは、たぶん「個人にとっての働く意味」を聞いているんだよね。その前提で答えていこう。

「お金以外の働く意味」って質問だけど、「働くことで得られるお金以外の報酬」って読み換えた方が意図が明確にできそうかな。

お金以外の報酬について考える前に、まずお金を稼ぐことの意味を確認しておこう。

勘違いしやすいけれど、人が生きていく上でお金は別に必須なものじゃないんだよ。お金は何かと交換するための手段に過ぎないんだ。必要なものや好きなものと交換できるから、お金には価値があるんだね。

ちょっと難しい言葉を使うけれど、そもそも貨幣経済が生まれたのはその必要なものの交換が難しかったからなんだ。

大昔、お金がまだ発明されていなかった時代にきみが生まれていたとしよう。きみはある海沿いの集落で魚を獲って暮らしている。でもたまにはイノシシの肉が食べたくなる。そういうときはどうするかというと、きみが獲った魚を持って山に住んでいる集落へ行き、物々交換をしに行くんだね。

でも、タイミングが悪くて山の集落ではイノシシが獲れていなかった。他に交換できそうなきみの欲しいものもない。それじゃあ、今度イノシシが獲れたらぼくのところまで持ってきてよ、とお願いしてきみは魚を置いていく。

ところが、何日経っても山の集落の人たちはイノシシの肉を届けに来ない。約束が違うじゃないかと文句を言いに行くと、誰もそんな約束はおぼえていないって言われてしまった。証拠もないし、きみは諦めて海沿いの集落にとぼとぼ帰っていく。

これじゃ、困っちゃうよね。

そこで発明されたのがお金なんだ。いま交換できるものがないときに、貸し借りをはっきりできるように代わりに渡すために生まれたんだね。そのうちお金が物の価値を表す尺度として機能しはじめると、すごくダイナミックなドラマが展開して面白いんだけど、その話をはじめるといくら時間があっても足りないから割愛するよ。もし興味があれば、社会の先生や図書館の司書さんに尋ねてみるといいんじゃないかな。

ちょっと横道に逸れちゃった。

ここまでをまとめると、きみの質問は「働くことで得られる必要なものや好きなもの以外の報酬」って翻訳できると言いたかったんだ。

交換で手に入れられないものといえば、心の問題だよね。リストアップするとこんなかんじかな。

  • お客さんや会社の仲間に感謝されたり、喜んでもらえる。
  • 大きな会社に勤めたり、昇進して周囲から認められる。
  • 仕事が上達する。

1番目はとくに説明しなくてもいいよね。2番目については、部活の大会やコンクールで賞をもらうことを想像してもらうとわかりやすいと思う。

わかりづらいのは3番目かなあ。

きみには何か趣味はあるかな。誰かに喜ばれるからだとか、ほめられるからだとか、そういう理由じゃなく自分が好きで取り組んでいること。スポーツでも、ゲームでもなんでもいいよ。趣味が上達するとうれしいよね。それと同じで、仕事も上達してくるとそれ自体が楽しいんだ。

でも、この3つ目の楽しさが感じられるかは人それぞれなんだ。

嫌々仕事をしている人はいくら上達したってこの楽しさを味わうことはできない。逆に、楽しんで仕事をしている人は、少し上達するだけでも楽しくなるから、仕事がどんどん楽しくなる。鶏が先か卵が先かって話ではあるんだけど、人間は自分がやっていることを無意味だとは思いたくないから、この楽しさを味わえる可能性は低くないとは思うけどね。

だけど、この3つの「仕事の意味」は心の問題だから、仕事をすれば必ず付いてくるものじゃなく、もし少しでもそれを感じられたらラッキーくらいに思っておいた方がいいと思う。仕事の楽しさなんて、苦しい期間を乗り越えて、じっくり取り組まないと見えてこないものだからね。

リクルートって会社が「仕事が楽しいと人生が楽しい」なんてコピーを流行らせてしまったんだけど、仕事は楽しくやらなければならないとか、楽しくなければ適職じゃないって考え方は間違いだよ。お金がもらえたら仕事だ。他の動機や意味なんて必須じゃない。あくまでそれはおまけだ。

逆に、楽しさが主な目的になってしまうと、「楽しければ低い給料でかまわない」みたいな価値観にも染まりがちで、それがいま社会問題になっているブラック企業の話にもつながるんだ。

ブラック企業には、「こんなに楽しくてやりがいのある仕事なんだから、給料は安くてもがまんしろ。むしろ、会社に感謝して尽くせ」って洗脳をするところが少なくないからね。気をつけて欲しいな。

最後に、質問に対する答えとしてまとめておくよ。

「お金以外の働く意味」はある。誰かに喜んでもらえたり、認められたり、上達する楽しみがあるんだ。だけどそれは必須じゃないし、必ず得られるものでもない。人によってはそういうものが味わえることもあるってだけのことなんだ。

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